小島正憲の凝視中国

緊急情報:上海市で港湾トラック運転手のスト発生&暴動情報検証:2011年4月 


緊急情報 : 上海市で港湾トラック運転手のスト発生  
25.APR.11
 以下のニュースについて、スト発生の事実については、現場検証済みである。

 現在、この港湾トラック運転手のストは、上海の新聞・テレビを始め、マスコミには一切報道されていない。かろうじて一時的にネットに情報が流れたのみである。日系の港湾業者や商社関係、荷主などの関連企業には、当日中にこの情報は流された。しかし日本のマスコミでは、まったく取り上げられていないため、この事件の重大性を考えて、ひとまず緊急発信する。事件の背景や影響などの分析は、4月の暴動情報検証で行う予定である。

 4月20日午前10時ごろ、宝山区蘭崗路276号中集公司の門前で、約3000人のトラックの運転手が、貨物を搬送せずに集合し、「港湾利用の諸費用徴収反対、ガスの付加税金を取り消せ、高額の注文費を取り消せなど」と書いた横断幕を掲げながら政府に抗議した。

         
                     4月20日現場の様子(ネット上の写真から)

 午後3時ごろ、抗議をする運転手たちがますます多くなり、道路を封鎖するなどしたため、秩序維持のため、政府当局は数十台のパトカーと500人の警察を出動させた。警察は抗議する運転手達を殴ったりして強制的に排除したので、現場は一時的に大混乱になった。この衝突事件では、運転手数人が拘束され、一人が死亡したという。この騒動は夕方6時ごろに収束したという。

 現場のトラックの運転手たちは、比較的小規模のトラック会社に勤務している人が多く、10年間ずっと搬送費が増額しないため、給料が少しもアップしないのに、いろいろな費用が高くなり、燃料代も値上がりしたことと、政府の管理もルーズであったので、陳情と抗議をしないと、人並みの生活ができないと話している。運転手達は、政府への要望について、1週間以内の回答を要求したが、政府関係部門は1か月以内に答えると返事をした。労働者たちはもし一週間内に答えてくれなかったら、5月1日まで引き続き抗議のストを続行するつもりだと話した。

 4/24夜、当局は運転手の要求をすべて飲む形の決定を発表した。

           
             中集公司の北門                       中集公司の南門

 ちなみに、運転手の今の一ヶ月の給料は5000元ほどで、会社に対して不満があるわけではなく、諸費用の減額を、政府と交通管理局に要求しているようだ。

 今度のストライキは1個所だけではなく、浦東洋三港や、外高橋に近い越海路と華東路、張楊北路と港華路でも同様の事件が発生したという。それらの道路では、ストライキに参加した運転手たちが、正常に勤務し運転しているトラックに投石したり、それらの運転手を殴ったりして、正常運転を妨害した。数百人の警察が現場に秩序維持に出動し、ストライキ中の数人を拘束し事件が収束したという。

※私見 : 私がこのストライキを重大事件であると考えている理由は、下記である。
@中国の経済の中心である上海で起きた大規模なストライキであること
A中国経済の根幹である輸出入の死命を制する港湾のトラック運転手の大規模なストライキであること
B事前に周到に準備されたストライキである形跡があること
C他の港湾都市に波及する可能性があること

 未確認ではあるが、浙江省の寧波港にも、同様のストの動きが出ているとの情報がある。



暴動情報検証 : 2011年 4月 
06.MAY.11
4月は、上海で港湾トラック運転手の大規模なストが起きた(緊急情報として4/25配信済み)。

 この事態は中国政府において、社会主義中国建国以来の最大のストとして捉えられており、今後が注目される。

1.〜 3.は現場検証済み。4.以降は未検証。暴動評価基準は文末に掲示。


1.上海港湾トラック運転手スト 続報。 暴動レベル0。

@4/21、22の両日、上海で港湾トラック運転手約2000人がストライキを行った。3日間連続で、数百人規模という報道もある。私が現場を見回った4/24には、すでに沈静化していた。このストライキの実態については、依然として新聞やテレビなどの報道はまったくない。ただし4/25の新聞各紙は、下記の上海市の方針発表のみ報道。

A4/25上海市当局は、運転手たちの要求に応え、以下の8項目の方針を発表した。
・コンテナヤードで法的根拠なく課している燃油付加費と夜間操業費を撤廃。
・ヤードでのコンテナセット費を現状の50元から20元へ、ヤードに通じる高速道路料金を現状の55元から50元に引き下げる。
・決定した料金については、勝手に引き上げてはならない。
・コンテナ引き渡し時の書類費用は10元とする。
・その他の費用については、事前に徴収項目の価格などを明示すること。勝手に各種の費用をコンテナ陸上輸送企業に負担させてはならない。
・法的根拠無く勝手に手数料などを徴収した場合は、厳罰に処す。
・上海市の状況によって、双方に適切な方針を出し施行する。
・コンテナヤード企業の経営状況について、上海市は積極的に支援する。

B上海市政府は、この抗議行動を社会主義中国建国以来の最大のストとして認識し、ただちに対応した模様。

C今のところ、他の港湾には波及していない。中央政府がただちに沿岸部諸都市に指示し、地方政府当局が敏速に対応した模様。ただし今回の港湾トラック運転手のストは、他の業界にも波及する可能性があり、中国政府は神経を尖らせているという。

D今回のストの背景。 上海の港湾運転手の特殊性。

・改革開放後に港湾運送を担っていた国営会社はすでに大半が経営破綻したが、上海の港の権益は港湾会社と船会社が独占的地位を占め続けていた。その後、港湾運送の仕事量が急増する中で、港湾運送は個人経営者に業務委託されるようになった。港湾運送に関連する労働が厳しいため、上海ではこれらの個人経営者は河南省と山東省の出身者がほとんどを占めるようになった。これらの個人経営者はトラック運転手経験者であり、自ら運転しつつ、トラックを5〜20台持っているものが多く、2000〜3000人が存在しているという。これらの個人経営者は、港湾会社や船会社に対してまったく交渉権を持っておらず、一方的に悪条件を飲まされ続けていた。
・今年に入って、ガソリン代が大幅にアップしたり、港湾および船会社が勝手に諸費用をアップしたため、港湾運送個人経営者たちが、運転手たちと結束して今回のストを行った。

E中国各都市でタクシー運転手の収入減に対する事前の対策が打たれている。これらは運輸労働者の抗議行動を未然に防ごうという政府の方針である。上海市では、5/1から市内のタクシーの会社への上納金を300元引き下げ、有料道路の通行費用も50元引き下げた。ガソリン代などが高騰しているため、運転手の収入低下を防ぐ目的。深セン市では、タクシー乗客にガソリン代高騰分を別途に負担させる燃油サーチャージ制を採っており、それを3kmで3元に引き上げた。


2.4/5広東省湛江市麻章区南畔村で、土地を巡り村民同士が衝突、発砲。4人死傷。 暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 4/5湛江市麻章区南畔村で、村民同士の土地争いがあり、銃で撃たれて、1人が死亡、3人が負傷した。この村の前村長を親族に持つ男が、以前から村の土地を私物化していたため、村民が抗議をしていた。4月に入って村民の一人が、村から許可をもらい、その場所に家を建てようとしたところ、男は夜中に急いでそこに木の苗を植え、その土地が自分の所有物であることを示した。翌日、村人たちが男に抗議したところ、男は散弾銃を持ち出し発砲した。男とその妻も、村民たちに殴られ、手足を骨折したという。

              
                      村民たちが奪い合った土地

・実情 : 基本的にはマスコミ報道通り。この地方は観賞用樹木の栽培が盛んなところで、結構、裕福な村であった。ただしこの地域の村民の多くは銃砲を所持しており、小さな諍いでも発砲事件になることが多いという。

3.4/7福建省福州市晋安区新店鎮健康村西荘で、土地収用に反対の農民と警官が衝突。
                                                     暴動レベル1。

・マスコミ報道 : 4/7福州市晋安区新店鎮健康村で、土地収用反対の農民と武装警察約1000名が衝突し、7〜8人の村民が負傷した。4/6政府が村の壁に、村の土地を収用するとの通知を貼りだしたので、村民たちは省政府に陳情に行ったが、10数人が拘束された。

この村の所有地はもともと1300ムーほどあったが、鎮幹部たちの手によって売却され、現在村民たちの手には100ムーしか残っていない。その土地も、鎮幹部が売却をしようとしたので、村民たちが抵抗した。鎮幹部は、村民たちに1ムー=1800元の補償金を払うという契約を提示したが、近隣の土地が1ムー=1.5〜2万元で取引されているため、村民たちは納得していなかった。

              
                        当日の様子(ネット上の写真から)

4.4/9〜13四川省阿ハ藏族羌族自治州阿ハ県で、ラマ僧や住民と武装警察1000名余が衝突。
                                                     暴動レベル2。

・マスコミ報道 : 3/16阿ハ藏族羌族自治州阿ハ県の格徳寺で、共産党の統治を批判する若い僧侶が焼身自殺した。これを契機にして1000名ほどの僧侶がデモ行進を行った。政府は武装警察1000名ほどを出動させ、これを鎮圧し、さらに4/12、政府は格徳寺の18〜40歳の僧侶全員を、「愛国主義教育」のため他の場所に連行しようとした。そのとき駆けつけた数百人の住民がこれを阻止したため、武装警察と衝突し、住民2名が死亡、多数が負傷、僧侶300名ほどが拘束された。その後、同寺は武装警察に包囲封鎖されたため、寺院内にいる2500名ほどの僧侶は、食糧などが不足し、困窮しているという。

5.4/10朝8時半ごろ、北京市の地下教会の信者100名ほどが、公安当局に連行される。
                                                    暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 4/10朝8時半ごろ、北京市の地下教会「守望教会」の信者100名ほどが、礼拝中に公安当局に連行された。「ジャスミン革命」の影響を怖れた政府は、この教会の布教活動を弾圧しており、内モンゴル、新疆ウイグル自治区、安徽省、江蘇省、広州市などでも連行されているという。

6.4/13、雲南省昆明市郊外で、山奥の工場など強制取り壊し、所有者が放火。 暴動レベル0。

・マスコミ報道 : 4/13昆明市郊外の山奥に建てられていた工場など、184棟(延べ18万平方m)が、政府の手で強制取り壊しとなった。それらは養殖業、家具製造、ダンボール製造、レンガ製造などの工場であったという。強制執行の当日、その措置に納得していない所有者が突然、自分の作業所に放火。大火事になったという。

≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし
暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ
暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む
暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動
暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動